るりの好きなおにいちゃま

別のところに覚書をスライドさせよう(汗。

    • 続き。

るりの大好きなお客さんは「おにいちゃま」と呼ばれていた。
もちろん本名だって名詞だって住所だって会社だって全部知っている。
でも、るりは自分から連絡をしないことにしていた。
堅気のおにいちゃまに迷惑をかけたくないから。
そして、おにいちゃまは結構日本にいなかった。

出張から戻ると必ずお土産をくれる。
「今回は時間がなくて、飛行機の中で買ったよ。」と時計。
るりは物がほしかったわけではない。
おにいちゃまのお話が大好きなのだ。

「おにいちゃまって、世界を飛び回るビジネスマンなのね!!かっこいい!!」
お膝に座っていろいろ聞く。るりの極上の時間だった。
「…でもね、るりちゃん。おにいちゃまは”出世競争”ってやつから遠いところにいるのよ。おにいちゃまの上司が”派閥争い”に負けてね(苦笑)。るりちゃんの期待には副えないと思うよ。」
「何それぇぇぇ???おにいちゃまに意地悪するひとがいるのねっ?!るり許さないぃぃぃぃ」
「違うよ。意地悪じゃなくて、”駆け引きと競争”だよ。るりは競争しないでしょ?駆け引きは…するかもしれないど(笑)。」

おにいちゃまはいつも優しくて、るりじゃないときもずっと一緒にいたいと言ってくれた。
でも、それは無理。
るり、おにいちゃまの知ってるるりじゃないもん。
分かったよ、無理言ってごめんね。ずっとかわいい妹でいてね、と頭をくしゃとする。
うん、るり、ずっとおにいちゃまの妹でいる。にっこり笑って本気の約束。真剣だもんね。
おにいちゃまね、しばらくまたイギリスに行くよ。
…寂しいな。でも、るりいつまでも待つよ?
おにいちゃまが帰ってくるの待ってる!!
ありがとう。じゃあ、行ってくるね。
うん、気をつけてね。いってらっしゃい。

このあと3週間くらい携帯も連絡が取れなくなる。出張に行ってしまった。
ふぅ、しばらく嫌いなひとばっかり相手にするんだな。
ちょっと泣けてきたりもした。